おなかがすいたら登れない(旧)

ネコは空飛び、犬は登る

おしゃべりなカラス/クライミングのオリンピック参加

2020年東京オリンピック・パラリンピックの追加種目の一次選考が行われ、22種目の立候補の中から8種目が最終候補として選ばれた。その中にスポーツクライミングが入っているという。

クライミングを飯のタネにしている業界の方々は、オリンピック参加は“悲願”なのかもしれないが、個人的にはどうでもいい。というより、どちらかと言えば、追加種目に選ばれなければいいな、と思っている。
(報道によると、野球や空手が有力だということで、クライミングが選ばれる可能性は、いまのところ低そうなので安心だが)


そもそも、という話だが、近代オリンピックというイベントのあり方、つまり選手が国家を代表し、国の威信をかけて世界一を目指すというあり方自体が、19世紀型、帝国主義型のイベントであり、どうしようもなく古臭いというか、イナカ臭いというか、ださいものだと感じる。

仮に「世界の一流選手が一堂に会して競うのを見たいなあ」という単純な発想だとしても、すでにワールドカップがあり、世界選手権もあり、その上さらにまたオリンピックか、という気もする。パンとサーカス、ですか?

先日、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職問題が明らかになった。過去にはIOC(国際オリンピック連盟)の汚職問題も、何度も取り沙汰されている。これらに端的に現れているように、現在の国際的なスポーツイベントは、莫大な金がうごくビッグビジネスであり、金と利権、汚職の固まりである。だからこそ、ワールドカップがあり、世界選手権があり、オリンピックもあり、屋上屋をいくつ重ねんるだという状態になっているのだ。端的に、儲かるから、ということだろう。

なかでも、オリンピックは最大の「スポーツ興行」だ。
その巨大な金の流れに一枚噛みたいと願う国内のクライミング業界関係者が、オリンピック参加を“悲願”と考えたとしても、不思議ではない。
もちろん、業界関係者が金のためだけに動いているとは、まったく思っていない。クライミングの社会的な認知度や地位を向上させたい、といった気持ちもあるに違いない。
「クライミングの社会的認知度が上がることで、いろいろなメリットがある」という意見も出てくる。
だが、本当にそうだろうか?

オリンピックにスポーツクライミングが採用されたとして、それをテレビで見た、まったくクライミングを知らない人はどう思うか。
「人工壁でプラスチックホールドを登って、高さを競うのがクライミングというものね」「“サスケ”みたいなもんか」
といったところだろう。

そのような形で社会的認知が向上したとして、クライマーにとって、なにか良いことがあるのだろうか。
新しい岩場の開拓が容易になる?
アクセス問題が解決する?
どちらも、見当外れであろう。
もし、岩場開拓の努力をされている方たちの労苦が大いに緩和されることになるなら、オリンピック参加も悪くないとは思うが、客観的に考えて、その可能性は非常に低いと思う。
オリンピック競技を、外の岩場でやるなら、別だが。

唯一考えられるとしたら、JFAのカネ回りが多少良くなって、終了点や支点の整備が進むことくらいか? 本当にそうなるとして、の話だが。

結局、自分のような、単に岩を登ることが好きだから登っている、というだけの人間には、ビジネス的な金の流れはもちろん、クライミングの社会的認知度も、なんの関係もない。


また、オリンピック参加によってトップクラスの選手たちの待遇が多少でも良くなるはず、という声もある。

過去に何度も書いているが、ぼくは、クライミングとは自分のために登るもの、究極の自己満足の遊びだと思っている。
だから、ヘミングウェイにならって「勝者には何もやるな」としか言いたくない。

だが、それはおいておいたとして、オリンピック競技になったら選手の待遇が向上するのか? そりゃ、オリンピックに行くときは、その遠征費くらいは出るだろうが。

ボウリングというスポーツは、だれでも知っているだろうし、一度は遊んだことがあるだろう。社会的認知度で言えば、クライミングとは雲泥の差である。
ぼくが子どものころ、ボウリングは大ブームを引き起こし、日本全国にボウリング場が作られた。だが、ブームが廃れると、その多くは廃業し、全国で3800あったボウリング場が1000程度まで、つまり4分の1近くまで減った。まるでクライミングジムの将来を見るようだといったら皮肉が過ぎるか?

そのボウリングは、1988年のソウルオリンピックにエキシビジョンであるが、はじめて参加している(日本選手が銀メダルを獲っている)。だが、そのことでボウリング業界が盛り上がったわけでもないし、プロやファンが増えたわけでも、プロの暮らしが豊かになったわけでもない。

結局、それまでと変わらず、試合だけで飯が食えるプロはほとんどいないが、それでもボウリングを愛している者は、淡々とボウリングを続けている。

あるいは、もっと近いところで言えば、2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボール。この金メダル獲得によって、選手たちの生活が少しでも向上したのか?

クライミングがオリンピック競技になることで、良いことがあると思っている人は、こういったことを少し調べた方がいいと思う。


余談だが、クライミングって、知らない人が見る「見世物」として、面白いものだろうか?
ちょうど、テレビタレントが165mの壁を登った、というニュース?があったが、こういう「すごく高いところを登る」とか、あるいはスピードクライミングのように、速さが数字でわかる、といったことがないと、一般の人には面白さが伝わりにくいのではないですかね。
見た感じの面白さということで言えば、サーフィンの方が面白そう。
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by seeyou44 | 2015-06-23 20:34 | クライミング研究


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