おなかがすいたら登れない(旧)

ネコは空飛び、犬は登る

カテゴリ:クライミング研究( 36 )

中高年にはボルダリングよりロープクライミング

ボルダリングは身体に悪い。

身体へのいろいろな悪影響があるが、飛び降りて着地する際の、腰や膝への負担が、もっとも大きなものだと思う。
ジムで、分厚いマットを敷いていたとしても、いくたびに、何十回と飛び降りていれば、関節への影響はかなり大きなものがあるはずだ。外の岩場での薄いクラッシュパッドでは、なおさらだ。
これは若い時には、わからなくても、歳をとってから、影響を感じるようになるのが恐ろしい。

木村晋介さんがどこかに書いていたいが、若い時にボルダリングの着地をしすぎて腰を傷めたので、いまは絶対にボルダリングはやらないと。

ジムの関係者やメディアなど、ボルダリングを飯の種にしている人たちは、こういう負の側面はあまり言ってくれないので、自分で意識して気をつけるしかない。

ただしこれはボルダリングだけではない。どんなスポーツも、やり過ぎれば、つまり、ある程度本気でやっていれば、身体に悪い影響があるのは当然だ。ランニングだって、膝や心臓への悪影響がある。なので、ボルダリングだけが、他のスポーツと比べて突出して体に悪いというわけではない(と思うが、比較した研究などはあるのだろうか?)

もっとも、とっくにクライミングジャンキーになっている人は、なにを言ったって好きなように登るに決まってる。そろそろ50歳を迎え、膝の故障(靭帯断裂)や腰痛を抱えた自分も、体が動くうちはボルダリングをやめるつもりはない。

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ただし、これからクライミングを始めたい、あるいは若いときに登っていて、またやりたいと思っている中高年(45~50歳以上くらい)の人には、正直、ボルダリングはあまり向かないのではないのかなあ、と。

もちろん、やってもいいのだけど、なるべくクライムダウンを心がけるとか、膝や腰にサポーターやコルセットを着用しておくなど、それなりの安全対策を取って登る方がいいだろう。

一方、ロープクライミング(リードクライミングやトップロープクライミング)は、ボルダリングに比べれば、身体への負担は小さい。ビレイヤーがきちんとビレイしていれば、危険も少ない(無いわけではない)。

一般的に、高所で行われるロープクライミングより、より低いところで行われるボルダリングの方が危険は少ないようにイメージされるだろうが、実は、体への悪影響、健康被害の点では、ボルダリングの着地の方がずっと危険性が高い。
また、運動強度という点からも、一般的に、ボルダリングは瞬発系(短時間で最大の力を発揮する)であるのに対して、ロープクライミングは持久系(中程度の力を長時間発揮する)という傾向がある。
つまり、着地のことを別にしても、運動の内容の面でも、強度の高いボルダリングの方が怪我を誘発しやすいだろう。

というわけで、昨今はジムでのボルダリングが人気ではあるが、中高年がクライミングをやりたいのであれば、ボルダリングよりもロープクライミングの方が適していると思うのだ。

ただし、ロープクライミングは、高所で行うため、もし重大なミスがあると致命的になる。毎回の健康被害は少なくても、一気に命を失う可能性があるのが、ロープクライミングだ。もし取り組むなら、十分にシステムに習熟しておく必要がある。
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by seeyou44 | 2016-04-20 11:25 | クライミング研究 | Comments(1)

岩場への交通費メモ

最近は、電車で岩場に行くことが多い。
単純に、車を持っていない(あるいは自分のように運転免許を持っていない)仲間と行く機会が増えたからだ。

いまの巣からの最寄り駅は、御茶ノ水、または本郷三丁目。そこから、主な岩場の最寄り駅までどのくらいの交通費がかかるのかをまとめてみた(片道分、安い順)。

●北川
本郷三丁目~西吾野=792円

●聖人岩
本郷三丁目~越生 885+バス340=1,215円

●天王岩
御茶ノ水~武蔵五日市 918+バス310=1,228円

●河又
本郷三丁目~飯能 628+バス620=1,248円

●白妙
御茶ノ水~奥多摩 1,242+バス250=1,492円

●神戸の岩場・障子岩 
御茶ノ水~武蔵五日市 918+バス600=1,518円

●湯河原幕岩
御茶ノ水(小田急経由)湯河原 1,363 +バス(幕山公園)260=1,623円

●伊豆・城山
御茶ノ水(小田急経由)田京=2,109円

●伊豆・城ヶ崎
御茶ノ水(小田急経由)伊豆高原=2,366円

●小川山
御茶ノ水~信濃川上(普通電車) 3,670+バス580(川端下)=4,250円
(特急スーパーあずさ利用の場合、特急料金+2,160円=6,410円)

こうしてみると、バス代が案外高い。
近い上に、バスに乗らなくて済む北川への安さが際立っている。北川ラブ。また、伊豆方面(城山、城ヶ崎)も、びっくりするほど高いわけではない。4人同乗すれば自動車の方が安いだろうが、2人だったら、いい勝負か?
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by seeyou44 | 2016-01-15 17:26 | クライミング研究 | Comments(3)

2015年のクライミング総括

2015年のハイライトは、北川の「秋葉大権現」(12b)のRP。ワンテンになってからのトライ日数が12日、30便以上と、非常に苦労した、感慨深いルートである。RPグレード更新ともなった。その後の自分のクライミングが低迷していることに鑑みると、もしかしたら、生涯最後のグレード更新となるかもしれない。そう思うと、なお感慨深い。

クライミングをした日は175回。なんと、1年のうちの半分近くは登っていることになる。我ながら多いと驚くが、これだけ登っているのに、あまり実力が上がっていないとことに、さらに驚く。毎日、砂漠にじょうろで水をまいているようなもので、無駄といえば無駄だが、水をまくこと自体が楽しいのだから仕方ない。

外岩には、45日行った。クライミングを始めて6年になるが、これだけ外に行った年は初めて(14年、13年はともに23日)。なにより、一緒に行ってくれる仲間のおかげであろう。感謝します。

外岩の半分以上(23日)は北川だった。これだけ北川に通ったのは、「ルンルン・ヒロシ君」(12a)と「秋葉大権現」という難関ルートにトライしていたこともあるが、巣に近い池袋から直通の電車があり、駅から歩きで行ける(バスに乗らない)というアクセスの気軽さもある。アクセスの時間も短く、交通費も安い。車無しクライマーにとって、これはありがたい。

北川の次に行ったのが、神戸の岩場で7回、ここも、電車バスで行けるのがポイント。
あとは、城ヶ崎、城山、湯河原幕岩、カサメリ沢、太刀岡山、二子山、河又などの岩場に数回ずつである。
小川山に一度も行かなかったのが、やや意外か。歳をとると腰が重くなる。登っている時間より行き帰りのアプローチ時間の方が長い、というような感じだと、ちょっとつらくなってきた。小川山あたりだと日帰りではつらくて、泊まりでなら行きたいがそうなるとそれはそれで大変ではある。

インドアは、134日。T-wallの江戸川橋が92日、錦糸町が39日で、ほとんどを占めている。半年パスを連続で購入しているので当然だ。「ジムは外岩のための練習の場」だと思っているので、T-wallのパスがあるのに、わざわざ追加でお金を払ってあちこちのジムに行く気は起きない。
たまには他のジムで見慣れない壁を登るのは、楽しいものではあるが。。。経済的に余裕があれば。

ジムや外岩で遊んでいただいた皆様、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

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●ダイジェスト

1月
「生と死の分岐点」(12ab、伊豆・城山)、RP。

2月
「スパイダーマン」(12a、湯河原幕岩)、途中敗退。

3月
「ルンルン・ヒロシ君」(12a、西吾野・北川)、RP。

4月
「錦ヶ浦」(12c、西吾野・北川)、敗退。『岩と雪』などでラインを研究。幻のルート「スカイダイバー」を発見。

5月
北川で「秋葉大権現」(12b)トライ開始。
障子岩、神戸の岩場にはじめて行った。

6月
北川で「秋葉大権現」トライ続ける。

7月
北川に1回行くも、暑さでダウン。その後、ひどい風邪を引いて寝込む。

8月
カサメリ沢へ2回。「オリーブ」(11c)登れず。

9月
「オリーブ」(11c、カサメリ沢)、RP。
太刀岡で「ルートキラー」(11c)登れず。
北川通い再開し、「秋葉大権現」トライ続ける。

10月
神戸の岩場、濡れた岩でスリップフォール。膝を5針縫う怪我。

11月
「秋葉大権現」(12b、北川)、RP。
「カラヤブリ」(12a、神戸の岩場)、RP
「名無しのゴンちゃん」(11d、北川)、登れず。

12月
「ホテル二子」(11c、二子山)、登れず
「与太郎」(11b、神戸の岩場)、RP
「アイロンヘッド」(12a、城ヶ崎)、途中敗退。
「ホワイトシャーク」(11c、城ヶ崎)、途中敗退。

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●ギア関係
1月
ロープ・インフィニティを洗濯。
ソリューション2号(HF、2回め)、同3号(Mi6、1回め)をリソールに出す。

前半
ペツルスピリットエクスプレス(QD)5本。

8月
ベアールフライヤー(ロープ、中古)、BDスーパーシュート(ロープバッグ、中古)購入。ヤフオク セットで約9,000円

10月
BDライブワイヤー(QD)5本、ヤフオク。約11,500円

スカルパ、インスティンクト(レース)、江戸川橋での現品処分、10,000円。
期待していなかったが、意外に気に入って外岩のメインシューズになる。
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by seeyou44 | 2015-12-31 23:59 | クライミング研究 | Comments(0)

丘を越え行こうよ、口笛吹きつつ……。脱プラトーのために。

いま、丘にいる。
丘、すなわちプラトーを乗り越えて、さらなる成長の段階に進めるのかどうか、わからない。一定の年齢に達した者であれば、加齢による肉体の衰えという制約条件があるため、努力を続けていれば必ず上達するとは限らない。努力を続けていれば必ず上達していくのであれば、誰でも5.15を登れることになってしまうが、そんなことはあり得ない。肉体は衰えるし、人生は有限だ。

どこまで上達していくのか、その解答は、天賦の才能をベースとして、トレーニングの質・量と加齢による衰え、そして人生の残り時間をパラメータとした関数として導かれるのであるが、いずれも数値として明確に表せるものではないのだから、事前にはわからない。

結局のところ「やるだけやって行けるところまでいくしかない」ということだ。なんだか馬鹿みたいな話、ではあるが。

もちろん、そんなに上達しなくてもいい、という考え方もあるだろう。グレードを上げることだけがクライミングの楽しみではない、と。その考え方は否定しないが、とりあえず自分は上達を目指すという前提で考える。脱プラートのためのメモを書いておこう。

一般的なトレーニングの理屈として、プラトーを乗り越えるための原理は簡単で、これまでとは質的、量的に異なるトレーニングをして、体に与える刺激を変えるということに尽きる。身体への過剰な負荷がかかるとそれに適応して体が発達する。ところが、人間の体は適応力が高いため、同じような刺激を繰り返して与えても、慣れてしまい、一定以上は成長しなくなる。同じような強度で、同じような量のトレーニングをしているだけではいずれ行き詰まる、ということだ。
また、体の適応と言っても、神経系の適応によるものと、筋肉量の増大によるものとに大別される。刺激の与え方によって発達が異なる。

そこで、試合(大会)までの時間に、期分け(ピリオダイゼーション)を導入し、時期によってトレーニングの質・量を変え、適応のプロセスを最適するのが、スポーツトレーニングの常識となっている。

考え方の原理は簡単だが、それを実際にどう実行するかは、簡単ではない。クライミングにはトレーニングの原則をまとめて記した標準的な教科書がないこともある(海外の文献は知らない)。日本語で読める資料としては、故新井裕巳氏の一連の文章と、安間佐千氏が「ロクスノ」で少し連載していたときの記事くらいしか思いつかない。

し、常に応用問題であり、唯一の正解があるわけではない。自分の現状を認識することをベースにして、仮説を立て、試行錯誤するしかない。
優秀なコーチでもついていれば、適切なアドバイスが受けられるのであろうが、現実問題としては、自分で考えるしかない。

とりあえず、一番簡単な方法として、登る量を増やすことを考えている。

●解決すべき課題
・ムーブの引き出しが少なく、ムーブ解決能力が低い
・デッドポイント、ランジなどの瞬発系ムーブが超苦手
・指の引きつけ、保持力が弱い

●これまでのクライミング
・平日はだいたい週に2回のリードクライミング(1回に登る量は本気3本+アップ、ダウン、程度)
・週末は外岩、またはジム1日のリードクライミング(外岩だと本気トライ3本程度、ジムだと5本くらい)
・補強の筋トレは週1日~2日(クライミングと同じ日、または別の日)

●問題点(仮説)
・リードクライミングでの本気トライで同じルートを1日3回登るのでは、習得できるムーブが少なすぎるのでは?
・ジムのリードクライミングで12前半くらいまでだと、きついムーブは出てこないため、ムーブ力があまり強化されないのでは?
・リードクライミングだけだと、どっかぶりの壁がないので、被った壁を登る力がつかないのでは?

●解決策
・幅広いムーブを習得するために、トレーニングの量を増やす。疲労回復との兼ね合いがあり、下手をするを故障やオーバートレーニングを招くので難しいが、とりあえず、週に4日登ることにしてみて様子を見る。
・多彩な、また強度の高いムーブに対応できる力をつけるためにボルダリングの量を増やす(登る時間の半分以上)。
・指力と瞬発力の強化のために、キャンパシングをする。週に1~2日、クライミングの前に、30分程度のキャンパシングの時間をとる。

●スケジュール案
月:レスト
火:キャンパシング+ボルダリング
水:キャンパシング+ボルダリングorリード
木:リード+軽い筋トレ(チンニングなど、クライミング後にジムでできるもの)
金:レスト
土:岩場、またはジムでリード
日:筋トレ(ベンチプレス、スクワットなど、バーベル利用のもの)
(土日は、天候の具合などによって変更。土日の2日間とも岩場の場合、火曜のボルダリングを筋トレに振替)

上記以外に、軽い有酸素運動(30~60分程度のジョグやバイク)は、体重コントロールと循環器系の疾病予防など、体全体のコンディショニングのためにも必須だと考えているので、週に2回程度いれる。レストの日に入れてもいいし、筋トレの前後でもいい。

とりあえず、1か月くらいこれで回してみようと思う。もしハードすぎるようなら、レストをもう1日増やそう。
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by seeyou44 | 2015-12-10 10:58 | クライミング研究 | Comments(0)

クライマーあるあるムービー、「You might be a climber」

いわゆる「あるある」ネタ、「クライマーあるある」というものがありますよね。たとえば、「電車のつり革をカチ持ちする」とか、「ぶら下がれるところを見つけるととりあえず懸垂」とか、そういうやつ。
海外のサイトで、この「クライマーあるある」の面白い動画がありましたので、ご紹介します。

http://www.e10pitches.com/chalk-pot/you-might-be-a-climber



http://www.e10pitches.com/vertical-sentiment/you-might-be-a-climber-episode-2



タイトルの「You might be a climber」は、「クライマーだよね?」という感じでしょうか?

自分の英語の実力ではヒアリングは難しいのだけど、字幕が付いているので理解できます。
「if you look homeless」のところで爆笑。楽しそうで、いい感じです。

そういえば、以前に「Dosage」のパロディムービーをYoutubeで見たこともあります。あれも面白かった。

日本のクライミング情報では、こういうセンスのいいユーモアにあふれるものは、あまり見ないのが残念です。

クライミングは遊びなのですから、こんな風に、楽しく笑いながらやりたいものだと思います。
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by seeyou44 | 2015-11-19 15:25 | クライミング研究 | Comments(2)

初心者が知っておくべき、フリークライミングの道具について(2)

●(2-1)この記事が対象とするクライミングと、対象者
ここでは、外岩でのリードクライミング(特に、ボルトルートにおけるスポーツクライミング)において必要な道具(ギア)について説明する。基本的な対象は、これからクライミングをはじめたい入門者、あるいは最近はじめたばかりの初級者である。

検索でいきなりこのページに訪れた人は、まず前回の記事を読んでいただきたい。
http://seeyou44.exblog.jp/21889545/

フリークライミングとは、第一に「自分の身体だけで、自然の岩をありのままで登ろうとする精神」のことである。
だから、「この道具を揃えたら、立派なクライマー」みたいな言い方は、そもそもフリークライミングをまったく理解していないものである。

前回はその点について確認した。

だが、なんでもそうだが、理念が現実と一致することは、通常ありえない。フリークライミングにおいても、目指すべき理念から「なるべく」外れない形でということを意識しつつ、実際は道具を利用する。
その理念を最初から共有していない人は問題外として(それはそもそもフリークライマーではない)、理念は共有していても、上の「なるべく」の範囲をどうとらえるかが、人によって異なるので、ときに議論が生じる。(というか、最近はあまり議論も生じないようだが。)

そして、理念は理念としてしっかり理解してもらいたいが、それを唱えているだけは、非現実的であり、不親切だろう。実際には道具を使うのだから、それについてもきちんと説明したい。

なお、リードクライミングのシステム自体については、ここでは解説しない。市販の参考書で確認していただきたい。私のおすすめは『増補改訂新版 イラスト・クライミング』(阿部亮樹著、東京新聞出版局)である。


●(2-2)目的に応じたギアの分類
クライミングギアは、「安全確保のための道具」と、「その他」の2つに大別できる。
安全確保のための道具とは、クライマーがクライミング中に落ちた時に、地面まで滑落することを止めるために使うもので、ロープやハーネス、クイックドローなどである。
一方、「その他」は、シューズやチョークなどである。これらは、本当は「登るための道具」と言いたいところなのだが、「安全確保以外に、道具を使わないで登るのがフリークライミング」という定義なので、登るための道具という言い方は、フリークライミングの定義と矛盾する。そこで、「その他」としておく。


●(2-3)必要度に応じた道具の分類
安全確保のための道具の多くは、「絶対に必要なもの」である。一方「その他」の多くは、「あってもなくてもよいもの」である。
たとえば、ロープは「絶対に必要なもの」である。
一方、クライミングシューズは「あってもなくてもよいもの」である(スニーカーや登山靴で登っても、あるいは裸足で登ってもかまわない)。
当然のことだが、揃える順序としては「絶対に必要なもの」が優先で、「あってもなくてもよいもの」は優先度が低い。


●(2-4)必要単位に応じた道具の分類
リードクライミングは通常、2人が1組になって行う。1人が登る人(クライマー)で、もうひとりが安全を確保する人(ビレイヤー)である。

クライマーとビレイヤーとは、ロープで結ばれているが、そのロープは「ハーネス」によって各自の身体に固定されている。

ここからわかることは、「ハーネス」は各自に1つずつ絶対に必要だが、ロープは1パーティ(2人)で1本あれば足りるということ。(パーティとは、クライミングをするグループのことである)。

このように、クライミングのギアには「各自に1つずつ必要なもの」と、パーティ(2人)に1つあれば足りるもの、とがある。


●(2-5)道具は、各自が自分のものを使うのが原則
パーティに1つあれば足りるものは、人から借りて使うことができる。

ただし、クライミングギア、特に安全確保のためのギアは、自分のものを使うのが原則である。
その理由は、ギアの信頼性を他人に担保させないこと、言い換えると、万一事故(ロープ切断など)が起きた場合の、責任問題を回避するためである。安全性について自分で管理できる部分は自分で管理できるようにしておくのが基本、ということだ。
また、ギアは使うたびに消耗するので、他人のギアの消耗を防ぐため、という理由もあげられる(個人的にはケチ臭い理由だと思うが)。

つまり、(2-4)で説明したように、物理的には、ロープは各パーティに1つあれば足りるのだが、実際には、各自が自分のロープを持参し、自分が登る際には自分のロープを使うことが原則、だと覚えておこう。

ただし、山岳会や学校のサークル的な団体などでギアを共有物として共同購入していたり、あるいは親しい友人同士で、ロープ担当とクィックドロー担当などと分担して持参することを予め話し合っている場合などは、この限りではないだろう。

また、これからリードクライミングを始めたい初心者が、ためしにトライするような場合、いきなりすべての道具を揃えることは、ハードルが高いだろう。そういう際は、先輩や仲間の道具を借りて使ってもよいと思う。

このように、ケースバイケースで例外はあるが、あくまで原則は「自分のギアを使う」であると思う。


続く(予定)。
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by seeyou44 | 2015-07-01 14:20 | クライミング研究 | Comments(0)

おしゃべりなカラス/クライミングのオリンピック参加

2020年東京オリンピック・パラリンピックの追加種目の一次選考が行われ、22種目の立候補の中から8種目が最終候補として選ばれた。その中にスポーツクライミングが入っているという。

クライミングを飯のタネにしている業界の方々は、オリンピック参加は“悲願”なのかもしれないが、個人的にはどうでもいい。というより、どちらかと言えば、追加種目に選ばれなければいいな、と思っている。
(報道によると、野球や空手が有力だということで、クライミングが選ばれる可能性は、いまのところ低そうなので安心だが)


そもそも、という話だが、近代オリンピックというイベントのあり方、つまり選手が国家を代表し、国の威信をかけて世界一を目指すというあり方自体が、19世紀型、帝国主義型のイベントであり、どうしようもなく古臭いというか、イナカ臭いというか、ださいものだと感じる。

仮に「世界の一流選手が一堂に会して競うのを見たいなあ」という単純な発想だとしても、すでにワールドカップがあり、世界選手権もあり、その上さらにまたオリンピックか、という気もする。パンとサーカス、ですか?

先日、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職問題が明らかになった。過去にはIOC(国際オリンピック連盟)の汚職問題も、何度も取り沙汰されている。これらに端的に現れているように、現在の国際的なスポーツイベントは、莫大な金がうごくビッグビジネスであり、金と利権、汚職の固まりである。だからこそ、ワールドカップがあり、世界選手権があり、オリンピックもあり、屋上屋をいくつ重ねんるだという状態になっているのだ。端的に、儲かるから、ということだろう。

なかでも、オリンピックは最大の「スポーツ興行」だ。
その巨大な金の流れに一枚噛みたいと願う国内のクライミング業界関係者が、オリンピック参加を“悲願”と考えたとしても、不思議ではない。
もちろん、業界関係者が金のためだけに動いているとは、まったく思っていない。クライミングの社会的な認知度や地位を向上させたい、といった気持ちもあるに違いない。
「クライミングの社会的認知度が上がることで、いろいろなメリットがある」という意見も出てくる。
だが、本当にそうだろうか?

オリンピックにスポーツクライミングが採用されたとして、それをテレビで見た、まったくクライミングを知らない人はどう思うか。
「人工壁でプラスチックホールドを登って、高さを競うのがクライミングというものね」「“サスケ”みたいなもんか」
といったところだろう。

そのような形で社会的認知が向上したとして、クライマーにとって、なにか良いことがあるのだろうか。
新しい岩場の開拓が容易になる?
アクセス問題が解決する?
どちらも、見当外れであろう。
もし、岩場開拓の努力をされている方たちの労苦が大いに緩和されることになるなら、オリンピック参加も悪くないとは思うが、客観的に考えて、その可能性は非常に低いと思う。
オリンピック競技を、外の岩場でやるなら、別だが。

唯一考えられるとしたら、JFAのカネ回りが多少良くなって、終了点や支点の整備が進むことくらいか? 本当にそうなるとして、の話だが。

結局、自分のような、単に岩を登ることが好きだから登っている、というだけの人間には、ビジネス的な金の流れはもちろん、クライミングの社会的認知度も、なんの関係もない。


また、オリンピック参加によってトップクラスの選手たちの待遇が多少でも良くなるはず、という声もある。

過去に何度も書いているが、ぼくは、クライミングとは自分のために登るもの、究極の自己満足の遊びだと思っている。
だから、ヘミングウェイにならって「勝者には何もやるな」としか言いたくない。

だが、それはおいておいたとして、オリンピック競技になったら選手の待遇が向上するのか? そりゃ、オリンピックに行くときは、その遠征費くらいは出るだろうが。

ボウリングというスポーツは、だれでも知っているだろうし、一度は遊んだことがあるだろう。社会的認知度で言えば、クライミングとは雲泥の差である。
ぼくが子どものころ、ボウリングは大ブームを引き起こし、日本全国にボウリング場が作られた。だが、ブームが廃れると、その多くは廃業し、全国で3800あったボウリング場が1000程度まで、つまり4分の1近くまで減った。まるでクライミングジムの将来を見るようだといったら皮肉が過ぎるか?

そのボウリングは、1988年のソウルオリンピックにエキシビジョンであるが、はじめて参加している(日本選手が銀メダルを獲っている)。だが、そのことでボウリング業界が盛り上がったわけでもないし、プロやファンが増えたわけでも、プロの暮らしが豊かになったわけでもない。

結局、それまでと変わらず、試合だけで飯が食えるプロはほとんどいないが、それでもボウリングを愛している者は、淡々とボウリングを続けている。

あるいは、もっと近いところで言えば、2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボール。この金メダル獲得によって、選手たちの生活が少しでも向上したのか?

クライミングがオリンピック競技になることで、良いことがあると思っている人は、こういったことを少し調べた方がいいと思う。


余談だが、クライミングって、知らない人が見る「見世物」として、面白いものだろうか?
ちょうど、テレビタレントが165mの壁を登った、というニュース?があったが、こういう「すごく高いところを登る」とか、あるいはスピードクライミングのように、速さが数字でわかる、といったことがないと、一般の人には面白さが伝わりにくいのではないですかね。
見た感じの面白さということで言えば、サーフィンの方が面白そう。
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by seeyou44 | 2015-06-23 20:34 | クライミング研究 | Comments(0)

初心者が知っておくべき、フリークライミングの道具について(1)

ネットコンテンツのステレオタイプな表現に、「○○を××するために役立つ7つの方法」みたいな見出しの付け方がある。
こういう、数字の入った見出しがついてるだけで「ああ、そこらのネット情報を適当に拾っただけの手抜き記事ね」と思ってしまうし、実際にそういう単なるネットの寄せ集めコンテンツが多い。もちろん、中には有益な情報が混ざっていることもあるから、全部がくだらないと切って捨てることもできないのだが。

こういった記事はたいてい、ウェブサイトならアフィリエイトで小銭を稼ぐことを目的にしている。一方、従来からある商業メディア(媒体問わず)は広告スポンサーで成り立っている。
そのためどちらも、商売的な都合により、あるいは単なる無知により、どうでもいいことが強調されているくせに、大切なことは書かれていない、ということがよくある。

●これからクライミングをはじめる方に知っておくべき5つのこと

私がクライミング初心者に伝えたいと思う、知っておいてもらいたいと思う大切なことは、ジムの選び方でも、シューズの選び方でも、ムーブでもない。
そんなことは、本当にどうでもいい。

リードクライミング、ボルダリングも含め、フリークライミングでもっとも大切なことは「フリー」という考え方だ。
フリークライミングの「フリー(FREE)」とは、自由という意味ではなく、「アルコールフリー」などというときのフリーと同じで、「無い」「使わない」という意味である。では、なにを使わないのかというと、「道具を使わない」ということだ。

どんなものごとにも、それが生まれ出る母体がある。フリークライミングも、ある日突然無から生じたのではない。それまでに行われていたクライミングを母体として派生し、それを乗り越えて行こうとする意志をもって生まれたものだ。

「それまでのクライミング」とは、一口で言えば、「登るためならどんな手段を使ってもいい」というスタイルだった。岩に金属を打ち込んで、それを手がかり、足がかりにしたり、はしごを設置したり、上から垂らしたロープを掴んだり、とにかく、どんな手段を使っても頂上に達すればいい、ということである。
普通の登山道でも、少し危ないには、鎖が設置されていたり、足がかりとなるような金属が打たれているのを、多くの人はご存知だろう。要はああいうものを目的地(頂上)まで設置して行う岩登り、だと思えばいい。
人工物を使って登ることから、これを「人工登攀」と呼ぶこともある。

こう書くと、えらく簡単に登れるように思えるが、エベレストのような高所だったり、冬山だったり、あるいはオーバーハング(前傾)している壁、もろく崩れやすい壁だったりすると、そういう手段を使っても、簡単に登れるものではない。そもそも、そういったものを設置すること自体、たいへんな労苦だし技術も必要だ。だからそういった、「何でもあり」の登り方が、一概に安易なものだか、悪いものだというわけではない。

しかし、遊びというのは創意工夫で面白くなっていく。
あるとき、そういう「登るための道具」には頼らないで、自分の手足だけで登った方が、岩登りは面白いんじゃないの?と考え、実際にそういうルールで登り始める人たちがでてきた。
その背景には、自然をなるべくありのままに楽しむ、という考え方や、道具に頼らない人間の身体の力を見直すといった思想的な意味もあっただろう。

こうして、道具を使わず、純粋に自分の手足だけで、岩を掴んで登ることで、岩登りという遊びに奥深さや幅広さが出てくることがわかった。面白いのは、道具を使ってはいけないという「限定」を設けることで、むしろ遊びに広がりが出たことだ。
「こっちの方が面白いぜ!」と気づく人が増え、それを真似する人たちが増えてだんだん広がり、従来のクライミングとは別に「フリー(道具を使わない)クライミング」という、ジャンルができたのだ。

●フリークライミングにおける道具は「妥協の産物」、使わないほどいい

ただし、道具を使わないといっても、高いところを登り、失敗して落ちたら、大怪我をしたり死んだりしてしまう。それはまずいから、安全を確保するための道具(ロープなど)は、やむを得ず使ってもいいか、と考えられた。だがそれは、あくまで「やむを得ず」という、言わば妥協の産物として使うのであって、実際には使わなければ使わない程よいという考え方だ。
当然ながら、登るための手段(手がかり、足がかり)として、そういった道具=人工物をに頼ってはいけない。それがフリークライミングの大前提だ。
「岩以外の人工物を使って登るのは反則」というのが、現在に至るまでフリークライミングの最も基本的なルールだ。
もう1つのルールが、同じ趣旨だが、「岩に人工的な変化を加えてはいけない」ということ。つまり、登りやすいようにと岩を削ったりしてはいけないということだ。
こうして生まれたのが、安全確保のためだけにロープや支点を使い、確保者(ビレイヤー)が安全確保しながらクライマーが登る、いわゆるリードクライミングである。
(中には、「フリー」の考えを厳密に適用し、安全確保のためのロープも使わない人達もいる。そういう登り方を「フリーソロ」というが、失敗すれば死んでしまうような遊びだから、あまり一般的ではない。)

一方、失敗しても死なない程度の高さの岩をフリーで登ろう、という考えから生まれたのがボルダリングである。飛び降りても怪我をしない、死なない程度の高さの岩なら、安全確保のための道具も使わないで済むし、確保者もいらない。
つまり、より純粋な形での「フリークライミング」を楽しめるのがボルダリングである。

●「登るための道具は使わない」と言うが?

さて、以上のようなフリークライミング発祥の歴史と、意義を少しでも知っていれば、「初心者がクライミングに行くために必要な○○のモノ」みたいな発想自体が、本末転倒であるとわかるだろう。

「道具をなるべく使わないで登るのがフリークライミングだ」ということこそ、初心者が最初に知っておくべきことだ。

とはいえ、実際には道具は使う。
「妥協の産物」としての安全確保の道具を使うのは、すでに説明した通り。これはやむを得ない。
だが、それだけはない。より積極的に「登るための道具」としてのシューズも使う。また、今ではほとんどの人が使う(使わない人もいる)滑り止めのチョークも、「登るための道具」の1つと考えていいだろう。

「『安全確保以外の道具には頼らない』などといいながら、高機能なシューズ、高機能なチョークなどを使ったり、より良い性能のものを求めるのは、矛盾してるじゃないか」って?

まったくその通りだと思います。

本当は、先の定義は「シューズとチョーク以外は、登るための道具を使わない」と書き直されなければならない。

すると今度は、「じゃあ、クラッククライミングに必ず必要なテーピングテープはどうなの? じゃあ、クラックグローブは?」と、疑問はどんどん湧いてくる。

●結局、なにが一番大切なの?

要するに、フリークライミングの理念だの、定義だの、倫理だのと言ったところで、それはとても怪しい、いい加減なものなのだ。ルールブックがあるわけでもなく、地域によっても異なるし、時代によっても変わる。
極端に言えば、狭い「クライミングコミュニティ」によってなんとなく共有されている不文律、あるいは「空気」のようなものなのかもしれない。

ただ、唯一言えることは、そういうこと ――フリークライミングとはなんなのか、道具を使わないとはどういうことか、といったこと―― を考えながら登ることこそ、フリークライミングをフリークライミングたらしめている本質のひとつなのではないか、ということだ。

これからフリークライミングを始めようとする方には、ぜひ、フリークライミングとは何なのか、道具に頼らないとはどういうことなのか、あるいは、初登の尊重とはどういう意味を持つのか、良いクライミングとはどういうクライミングなのか、といったことを考えながら登ってほしいと思う。


気が向いたら(2)を書くつもりです。
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by seeyou44 | 2015-06-20 00:14 | クライミング研究 | Comments(1)

終了点には、自分のヌンチャクをかけよう(同人青鬼、池田氏の提言を受けて)

例によって前置きが長い駄文です。

■1
「ロッククライミング」という遊びを、冒険としてとらえるか、スポーツとしてとらえるか、その重点の置き方は人によって違うだろう。だがどのようにとらえるにしても、クライミングには他の遊びと大きく異なる点がある。それは、「プレイヤーが“遊ぶ場所”そのものの整備や保存にも、大きな関心を払わなければならない」という点である。

たとえばサッカーやバスケットをする人がコートを自分たちで作るということは、普通ないだろうし、長期的な視点でコートやゴールポストの状態に気を使うということも考えにくい。
また、登山やキャンプをする人は、フィールドの自然保護については注意するかもしれないが、登山道や山小屋、キャンプ場を作ったり、必要に応じて整備したりといったことは、普通はしない。

しかし、クライミングにおいては、プレイヤーたるクライマー自身が岩場を発見し、清掃したりボルトを打ったりして整備をし、そこを開拓する。
そうして作られた岩場は、(法的には個人や法人、国、自治体などの所有物であるわけだが)理念的にはクライマーの共有財産と呼べるものとなる。

多くのクライマーは開拓には実際には関与しないだろうが(ぼく自身も関わったことはない)、すべてのクライマーは、開拓者への敬意を持ちながら、岩場やルートを守り、後々のクライマーまで伝えていくことを大いに意識しなければならない。自分が、いま楽しく登れさえすえればそれでいい、というものではない。

これは、岩の改変(チッピング)などを行わないことはもちろんだが、必要に応じて浮石のチェックや整理、ボルトや終了点の確認、整備、さらには、アクセス問題を起こさないための岩場ごとの利用ルールやマナーの順守、ゴミの回収や清掃、といったことが、すべてのクライマーに求められるということだ。

つまり、ロッククライミングとは、単に登るだけの遊びではなく、クライミングをする場所(岩場)を作り、守り、残していくことをトータルに含めての遊びなのである。


■2
ところが、クライミングジムでクライミングを始める人が増えるにつれて、上記の認識が、薄れてくる。

商業ジムでは、ルートやボルト、終了点などは予め用意されているものであり、利用者はそれらを正しく使うことは考えても、それらの設置、整備については、考えなくてもよい。
商業ジムでは、利用者は対価を支払うことで、安全に楽しく遊ぶ権利を購入する。一方、管理者は対価と交換に安全で楽しい施設を提供する義務を負う。その点では、クライミングジムで遊ぶことは、遊園地で遊ぶのと変わるところはない。
また、その契約関係の上で、もし施設の不備を原因とした事故などが発生すれば、当然、施設管理者に賠償責任が生じるであろう。

しかし、■1で述べたように、自然の岩場は、「自分がそのとき遊ぶことだけを考えていればいい」という遊園地的な場所では、まったくない。

つまり、だれか特定の管理者がいて、ほうっていおいても岩場を整備をしてくれるわけではないのだ。
もちろん、実際には岩場の開拓者あるいはJFA、地元の山岳会などがリボルトや終了点の整備を行うことが多いのだろうが、それはたまたまその人たちがやっているということで、本来的には、開拓者やJFAなどにそういった整備、管理を行う義務があるわけではないし、もし事故などが発生しても、彼らが法的な責任を負うわけでもない。

その岩場を利用するすべてのクライマーが、利用する権利を持つと同時に、管理、整備を行う義務も持つ、と考えた方いい。
繰り返すが、登ることに加えて、岩場の整備、保護、継承といった点を含むのが、自然の岩場でのクライミング、すなわち「ロッククライミング」である。

最初はクライミングジムでクライミングを覚えた人たちが、外の岩場にも興味を持って、行ってみたいと思うことは当然あるだろう。
そういう人たちには、自然の岩場でのクライミングは、商業ジムでのそれよりも、もっと広い内容を含んでおり、同じ「クライミング」という名のついた行為でも、商業ジムでのそれと自然の岩場とでのそれは、大きな違いがあるということを、必ず覚えておいてほしい。


■3
目先の利益しか考えていない雑誌など商業メディアでは、この点をあいまいにしたまま、「クライミングジムに慣れたら、次は外岩デビューだ」などと、クライミングジムでのクライミングが、そのまま岩場でのクライミングに直結するかのような、安直で無責任な言い方をしていることが多い。

もちろん、しっかりした教育、啓蒙をして、外岩へいざなうのであれば、まったく問題ないのだけど、外岩でのクライミングを、商業ジムでのそれの延長のような「手軽なレジャー」のように紹介するのは、かなり問題であると思う。

いわゆる「アクセス問題」が生じる大きな要因の1つは、こういったメディアの安直、無責任な姿勢であると思う。


■4
さて、ここからが本題である。
ボルトルートにおいては、中間支点、終了点の状態を確認し、その保存につとめ、必要に応じて整備することは、その岩場を利用するクライマーの義務だと言っていい。
これは、5.9を登るのであれ、5.14を登るのであれ、同じだ。「初心者だから」「上級者だから」という言い訳は通用しない。
極論かもしれないが、こういうことが「むつかしい」「面倒だ」と思う人は、外の岩場では登るべきではなく、クライミングジムでだけ登っているのがいいと思う。
遊びなのだから、自分が適さないと感じるところにわざわざ行く必要はないだろう。実際、いまはジム専門のクライマーも少なくないし、それで悪いことはなにもない。

具体的には下記のような点に留意したい。

(4-1)終了点
終了点にはカラビナがかけられていることが多い。これを「残置ビナ」などと呼ぶが、これは当然、自然に生えてきたものではなく、だれかが設置してくれたものである。自分も、積極的にその“だれか”になろう。
カラビナの状態を確認し、摩耗していたり、バネが弱くなってゲートが閉じないといった状態になっていることに気がついたら、自分の持っているカラビナを付け替える。

摩耗した残置ビナを使った場合、どんな危険があるのかというと、ロープが切断し、死ぬ危険である。
「残置カラビナでロープが切れ、男性が墜死」
http://yukiyama.co.jp/mountain/2012/10/sharp-carabiner-cut-a-rope.php

(4-1-1)捨てビナの用意
逆に言うと、このような場合に付け替えるためのカラビナ(通称「捨てビナ」)を、常に2,3枚は用意しておくこと。
捨てビナは、文字通りその場に捨てて(置いて)くるわけだが、「もったいない」などとバカなことを言ってはいけない。あなたや他のクライマーの命が、1000円程度のカラビナより安いはずがない。
それに、捨てビナは、新品である必要はなく、ある程度使い古したもので、まだしばらくは使えるだろう、という程度のものでかまわない。ただし、ヌンチャクのハンガー側(上)用として使っていたものは、カラビナの内面にギザギザしたキズが付いているはず。そういうものは、ロープを傷めるため使用しない方がいい。

なお、初心者向けに付け加えるが、当然のこととして、ルートに置いてあるカラビナは、(付け替えるとき以外)絶対に勝手に外したり、持ち去ったりしてはいけない。それは端的に、「窃盗」という犯罪行為だ。人は見ていなくても、自分の良心は見ているし、いつまでも覚えている。犯罪行為はやめよう。

(4-1-2)残置カラビナの寿命
もちろんルートの利用頻度によるが、私が伝聞した範囲では、人気の岩場で、シーズンの間つねに人がとりついているような人気ルート(あるいはアップルート。たとえば、冬の伊豆・城山の「ストーンフリー」のような)の場合、終了点のカラビナの寿命は3か月からせいぜい半年程度ではないだろうか。翌シーズンまで(1年)は、もたないだろうと思う。

(4-1-3)自分のヌンチャクの利用
これは、同人青鬼の池田氏が、最近ネット上で提唱していたことを受けている。ツイッターやFBで話題になった。正直、その指摘を見るまで、私も意識していなかったのだが、これからは気をつけたい。
上記のように残置カラビナの寿命は案外短いのだけど、それを少しでも伸ばして、捨てビナを使う必要性を減らすために、終了点にも自分のヌンチャクをセットする。
通常、あるルートをトライするとき、1日に数回のトライをするだろう。仲間数人で同じルートをトライするなら10トライにもなるかもしれない。そのトライごとのロワーダウンで終了点の残置ビナを使っていると、そのたびに残置ビナが摩耗していく。
そこで、最初のトライで、終了点に自分(たち)のヌンチャクをかけておく。そしてその日の最後のトライ(回収便)のときだけ、残置ビナでロワーダウンするようにする。
こうすることで、残置ビナの摩耗を数分の一に減らせることになる。逆に言うと、寿命を数倍に伸ばせることになる。
なお、ヌンチャクのセットについては、ロワーダウン用であればそう神経質になる必要はなく、普通のヌンチャク2本を2箇所の支点に、ゲートの向きが逆になるようにかける、という程度で基本的には十分だと思う。(もちろん、終了点の設置具合によっては、さまざまな応用があるだろう)。

(4-1-4)トップロープの終了点
上記(4-1-3)はリードクライミングの場合の話だ。トップロープの場合は、これまでも「終了点は残置ビナを使わず自分で作る」というのが、クライマーの常識である。個人的には「絶対のルール」といってもいいのではないかと思う。
これは、トップロープでは、(1)終了点1箇所のみの支点となり、万一残置ビナに不具合があった場合など、危険性が非常に高くなるためと、(2)リードと比べてカラビナの消耗が著しいため、である。

ところが、このルールが守られないことが、意外と多い。自分たちが守るだけではなく、同じ岩場でトップロープを残置ビナで行っているグループがいたら、注意するようにしたい。ついうっかり、という人もいるだろうし、単に知らない、という人もいるかもしれない。
なお、トップロープでの支点は、1箇所であることを考えると、リードのそれより安全マージンを高くとった方がいい。単なるヌンチャクの2枚がけでは、少し不安だ。スリングを使った流動分散か固定分散で、環付きカラビナにロープをセットした方がよいと思う。さらにバックアップもあった方がいい。中途半端な知識での支点セットは大変危険なので、くわしいやり方は技術書で確認していただきたい。

(4-2)中間支点
(4-2-1)ボルト、ハンガーの確認

中間支点については、ボルトの状態を目視で確認する。ボルトの種類についての知識も必要だが、これはJFAが発行する「安全ブック」などで確認したい。
市販のクライミング入門書でも、ボルトやハンガーの種類まで書かれているものはほとんどなく、写真入りで解説しているのは、私の知る範囲では、井上大助氏の『アウトドア・クライミング』だけだと思う。

よくあるのが、ハンガーはきれいでもボルトが錆び錆びになっている場合。そのルートは登らない方がいいかもしれない。
また、ボルトのナットが緩んで、ハンガーが回ってしまうものを見かけることもある。
これを見つけたら、レンチで締め付けた方がいい。
もちろん、岩場に行くときはレンチを持っていくべき。登るときに毎回ぶら下げる必要なないと思うが、初めてのルートを登るときは、一応ぶら下げた方がいいだろう。
めったにないが(私は見たことない)、ハンガーそのものが割れていることもあるらしい。当然、そういうルートは登ってはいけない。そういう危険を見つけたときは、後からくるクライマーのために、メモ書きを貼り付けたり、チョークで岩に「×」を書くなどをすると親切だろう。

(4-2-2)敗退時の残置ビナ
ルートの途中で登れなくなってあきらめる、いわゆる「敗退」をして回収するときも、残置ビナが活躍する。とくにかぶったルートやトラバースルートだと、残置ビナがないと危険だったり、回収が不可能になることもある。
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by seeyou44 | 2015-05-13 22:26 | クライミング研究 | Comments(0)

北川の岩場で注意した話など

GAIDAさんのブログを読んでいたら、聖人岩にマナーの悪い集団がいた、という話があった。

すいていたけどイマイチ@聖人岩

若干、GAIDAさんに同意できないところもあるのだけど、全体的には、これは気分悪いだろうなあと思う。

これを読んで思い出したのだけど、自分も先日の北川で、人に注意するハメになった。

1人は、ガスコンロを使っていた人。お湯を沸かしてカップラーメンを食べていた。何度も書いているが、北川の岩場は火気厳禁、である。
「あれっ」と思ったが、食べる前に注意したら、せっかくの食事がおいしくなくなるだろうから、食べ終わって片付けをするまで待ち、さりげなくルートのことなどを話しかけてから、「ところで、、、」と切り出して、火気厳禁であることを伝えた。
注意する方も、けっこう気を使うものである。
もちろん、ご存じなかったということで、「教えてくれてありがとう」とおっしゃっていた。爽やかな感じの方であった。

もう1人は、残置ビナにトップロープをセットしていた人。
これは、私は気づかなかったのだが、そのラインを別のパーティの人がトライする段になって、「残置カラビナにトップロープかけちゃってます」と、言っていた。
かけちゃってます、じゃないだろう。たまたま、自分が横にいたので、「トップロープをセットするなら自分のヌンチャク使った方がいいですよ」と言っておいた。
あいまいに頷いていたが、「しまった」と思っているような感じだったので、それ以上は言わなかった。

最後に、これは「マナー」の話ではないが、ある意味でマナー以上に重要な件。
「北落師門」を見事にRPし、終了点からロワーダウンしようとする若者に、「ロープの流れが悪くなるから、リップで結び替えして降りた方がいいよ」と言ったところ、「結び替えできません」の返事が……。結び替えができないなら、上まで抜けて、歩いて降りてくればいいよ、と言ったのだが、さっさと空中にぶら下がってしまった。
案の定、流れが悪くなり、ぶら下がったまま、降りてこれない。
ぶら下がりながら、ポンピングのように体を上下に動かしドスンドスンという感じで体重をかけ、ようやく少しずつだが降りられた。
あんな降り方では、さぞ、ロープが傷んだことだろう。
見ていてけっこうヒヤヒヤした。

ジムならともかく、外岩でリードクライミングをやるなら、結び替えや自己脱出の技術くらいは当然知っておくべきだ。
それも、昨日今日にクライミングをはじめた初心者ならともかく、5.12のルートを登れるくらいのクライミング歴がありながら、結び替えができないとは、いかにも技術・知識がアンバランスだ。
これでは、なまじ高グレードを登れるだけに、事故を起こしやすいだろうなあ、とは感じた。


●北川の岩場について(定期コピペ)
北川の岩場では、過去にクライマーのマナーが悪かったことから、利用禁止の危機がありました。今後も長くこの岩場で登るために、下記の点に注意してください。

・火気厳禁(コンロ、タバコも)

・用便(大)は、必ず、徒歩7,8分くらいの元小学校にあるトイレで。とても綺麗です。

・岩場の入り口の駐車場に駐車する場合、必ず、神社の賽銭箱に500円を入れること。

・電車利用でも、いくらかは賽銭を入れた方がいいでしょう。気持ちです。

・人家が近いので、大声、奇声などは、控えましょう。

また、クライミング上の注意点として、下記の点もご留意ください。

・北落師門など一部のルートは、終了点にクリップした後、ロープの流れが悪くなるため、ロワーダウンには「結び替え」が必要です。結び替えができない方は、「終了点にはクリップしない」か「上まで抜けて歩いて裏から降りる」という方法もあります。

・リップに設置されているチェーンの支点(ラッペルステーション)は、ロワーダウン時の結び替え用です。終了点は、原則的に岩の上部になります。

・岩がかぶっていたり、トラバースのルートがあるため、ルートの途中にヌンチャク回収用のカラビナが残置されています。外さずに残しておいてください。

(参考)
http://freeclimb.jp/news/news2014_4.htm#kitagawa
http://www.climbing-net.com/iwaba_detail/%E5%8C%97%E5%B7%9D/
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by seeyou44 | 2015-05-01 15:09 | クライミング研究 | Comments(0)