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おなかがすいたら登れない(旧)

ネコは空飛び、犬は登る

また近所の銭湯がなくなってしまった。

今住んでいる巣には風呂がない。

以前、地下鉄の春日駅の近く、白山通り沿いに銭湯があった。巣から一番近いので、よく利用していた。
マンションの1階が銭湯、2階がサウナやマッサージ施設となっており、小さいながら比較的新しくて綺麗な店で、湯もぬるめで好みだった。深夜1時まで営業しているのも便利で、江戸川橋のTWで登った後に立ち寄ることも多かった。たまに、江戸川橋クライマーを見かけることもあった。
ところが、この銭湯が、ちょうど1年くらい前に廃業・閉店になってしまった。

その近く、もう少し白山の方に北上した東側、菊坂という坂の裏手に、もう1軒、菊水湯という銭湯があった。
この菊水湯は、昔ながらの合掌造りの建物で、狭い路地に古いくすんだ家屋が並び、いまだに手押しポンプの設えられた井戸まで使われている菊坂界隈の風景と、実にマッチしている。
古いものが好きな自分は、この銭湯の佇まいは好きだった。

銭湯は、水をたくさん使うので、川沿いに建てられることが多いという。
『地形を楽しむ東京「暗渠」散歩』(本田創、洋泉社)によると、この菊水湯のある菊坂下道(菊坂は途中から2本の道が並行して通り、上道、下道と呼ばれる)沿いにも、かつては、東大本郷キャンパス構内の池(三四郎池とは別の池)を水源とする川が流れていたらしい。現在は、銭湯の裏手から西片の交差点の方に向けて、暗渠が、車も通れない細い道となっており、かつての川の面影をしのばせる。銭湯散策と同じように、暗渠散歩も楽しいものだが、それはまた別の話。

菊水湯は、建物の外見も、そして内装も、古くからほとんどそのまま残っているような具合で、味わいはあるのだけど、メインの広い浴槽の湯がかなり熱かった。サブでぬる湯もあるのだが、とても狭くて3人入ればいっぱいだ。ぬるい湯にゆっくり浸かるのが好きな自分は、これは閉口する。だから、春日の銭湯があったうちは、そちらを主に利用していた。

湯が熱いのは、東京に古くからある銭湯に共通する特徴だ。
うちの近所でいうと、根津の六龍鉱泉(温泉だが)や、御徒町の燕湯(国の有形文化財)などは、44~45度にもなる高温で有名だ。そこまでではなくても、43度くらいの湯温の店は普通にある。
江戸川橋TWから近いところでは、江戸川橋の「竹の湯」や、神楽坂の「第三玉の湯」も、熱い。たぶん43度はあるだろう。ただ、第三玉の湯はぬる湯に加えて水風呂があるので、まだ良い。

(話はそれるが、もう20年も前、若いころ神楽坂に住んでいて、今と同じく貧乏だから当然風呂無しのアパートで、この第三玉の湯に通っていた。驚くのは、番台に座るご主人や奥さんの姿が、そのころとほとんど変わらないこと。いったい、どういうことなのだろう?不思議だ。)

春日の銭湯が廃業した後、そこに通っていた人たちは近くの菊水湯に移籍(?)して通うはずだから、こっちはウハウハだろう、と思っていたが、どうやらそんなことはなかったらしい。実際、菊水湯も(自分が行く時間が遅いこともあるが)、いつも空いていた。思えば、春日の銭湯だってそう混んでいるときはなかったから(客が自分だけ、というときもたまにあった)、その少数の客が移動してきたところで、たかがしれているのだろう。

そうして、非常に残念なことに、この菊水湯も9月末で廃業してしてしまった。

▼ある日突然貼りだされた廃業のお知らせ。「店主の病気」が悲しい。
また近所の銭湯がなくなってしまった。_d0252022_15481433.jpg


自分のように風呂のない家屋に住んでいる者は、このあたりでは少ないのかもしれない。銭湯に来ている客も、家に風呂はあるけど、たまには広い湯船に入りたいという人が多いのだろう。
しかし少数であっても、風呂なしの家に住む人にとって、銭湯は生活に必要不可欠なインフラである。また、そうではない人でも、高齢者などにとっては、地域の人たちと交流する文化的なインフラともなっているはずだ。実際、脱衣場で常連の人たちがおしゃべりに花を咲かせているのは、よく見かけた。
需要がないものは廃れるというのが、経済の原則ではあるが、生活インフラ、文化インフラであれば、そのような経済原則に乗せること自体がなじまない。区が補助をする、あるいは第三セクターなどの形で、残しておくことはできないものだろうか?

秋葉原にある銭湯「神田江戸遊」は、スーパー銭湯に近い現代的な銭湯だが(値段は普通の銭湯料金)、ここは千代田区との第三セクターのような形で運営しているらしい。24時間営業(銭湯は23時まで)であり、客も、近所の住民というより、秋葉原に買い物や遊びに来た地方在住者が多いようだ。深夜料金はかかるが、畳の大広間で朝まで寝ていることもできる。

これは秋葉原という集客力のある街だからできることなのかもしれないが、生活インフラであり、地域の人たちが交流する文化インフラともなりうる銭湯を、ぜひ行政が主導して残していってほしい。
by seeyou44 | 2015-10-01 15:48 | よしなしごと


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